あいうえ音頭

この時期は短歌の賞がいくつか重なっていて周りの人々が挙って50首連作を編むのですが私は特に興味がないので昨年から50首作るけど賞には出さずTwitterに流し既発表作にするという、奇行をしています。

今年も誕生日を迎えたので記念にあ〜んで始まる短歌を41首作ってみました。

以下詠草です。お楽しみください。

 

あいうえ音頭 笠原楓奏(ふーか)

 赤い花 赤くない花どちらもが私たちより美しく咲く
 良い服を買った矢先に雨が降るように世界は祝福をする
 移ろえば忘れていいと思うなら四季とは過去を殺める期間
 えいえいお えいえいおって本当に頑張るときは子音も捨てる
 お大事にしてくださいねそう告げる医師はみんなにそう告げている
 買って出たのは良いものの誰からも感謝されない担当大臣
 気になった人に気に入られるために個人保険に加入してみる
 くだらない話をしても赦される関係性を呼ぶ代名詞
 健康を害するものをこの世から消し去るために食べる揚げ物
 後悔は先に立たないらしいので多分行けない立食パーティー
 三度目の彼の話を聞き終えてマルゲリータは冷めきっている
 集団で下校したのに途中からひとりになって人生みたい
 筋書きの無い台本を携えてああ私って何しても良い
 席を立つときのひとこと以外にはただ凪いでいる沈黙のカフェ
 そうだ愛、銀座あたりに見に行こう多分なんでもあるんだろうし
 大会で負けなかったと言うだけで目立ってしまうおでこのニキビ
 ちょっとだけ寂しいときにちょっとだけ頼れる人が案外いない
 月を見て雅と思う感性を置き去りにして光る液晶
 丁寧に燃えてほしくて蝋燭に火を灯すとき震える右手
 特売の愛が売り切れできるなら安くしたいとみんなが願う
 名前からして強そうな上司だがたまに飴とかくれるから好き
 人間のことを呼ぶときニンゲンとやっぱり言うのだろうか猫は
 温まったビールもビール冷え切った愛も愛だと知らせるように
 猫の日がはたしていつか知らないが猫は今日だと云うように鳴く
 のうのうと歳だけ取ればおじさまにアップデートが来ない脳髄
 肺胞の全てで君を吸い込んで今日が春って信じ込みたい
 昼間からシャワーを浴びる非日常的空間は意外と安い
 普段なら履かない靴を履いた日はちょっと世界が崩れて見える
 謙り慣れた社員が死んだ目を輝かさせていただいている
 ほっといてほしい 私の産声も知らないくせに口説かないでよ
 またいつか巡り会ったらもう一度振ってあげるねさよなら茶髪
 南から吹いているので南風 人の間に潰れ人間
 無理なのよ端から君の頭脳では私を恋に落とすことなど
 めちゃくちゃな人生だけどめちゃくちゃに愛されていてこれも人生
 もう少し手間をかければいいものをできた勢いだけでツイート
 やだという語彙を持ってる大人ってちょっと羨ま妬ましいです
 指切りで契った数だけ裏切れるとすると約束も悪くない
 ヨーグルト食べた朝だけ赦される幸せそうな人間のフリ
 笑い事なんですもはや笑わなきゃやってられない夜もあるから
 をををををををを我らは夜もすがら左記の通りでどうかしてます
 ん、いいよ あなたの許可が下りるとき私たちって無敵なのかも

一日で作ったので手癖満載ですね。それもまた一興でしょう。
こちとら必死に生きているんじゃ。

余談ですが誕生日記念に弾き語りの1stミニアルバムも作りました。

youtu.be

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クリエイションは止まらない。